第17章 『夏の夜に。 』 烏養繋心
『烏養さん、隣、いいですか?』
そう言った私に烏養さんはいいぜと微笑んでくれた。
夏合宿も佳境に入った夜の自由時間。
タバコを吸いに出たあなたの後をそっと追った。
隣に座り頭を肩にもたれさせる。
「どうした?」
『少しだけ甘えても…いいですか?』
そう口に出せばそっと私の肩を抱く。
その力強い腕。
ふわりと香るタバコの香り。
わたし……やっぱり…
思い切って口に出そうとした瞬間、私の口からくしゃみが出た。
「お前さ…そんなに薄着だと風邪ひくぞ?
夏だけど森然は山の方だから夜は冷えるぜ?えっと…」
ばさりと何かが頭からかけられる。
びっくりしてそれを見れば…ジャージ…?
「日中着てたから汗くせーかもしれねーけど、ないよりマシだろ?」
そう言って笑う烏養さん。
『くさく…ないです…』
烏養さんに包まれてるみたい…
安心する。
「ほら、そろそろ消灯だぞ?
明日もあるんだからそろそろ部屋もどれ。」
ぽんっと私の頭を撫でながら烏養さんは立ち上がる。
「おやすみ。」
私、ずるいかな。
その笑顔を独り占めしたい。
廊下を歩いていく烏養さんの背中。
そこに私は走って飛び込んだ。
『烏養さん…私、烏養さんのこと…』
end