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【マフィア松】Focus Me【おそ松さん】

第5章 蒔かぬ種は生えぬ


『ちょっと着てみる、脱衣所借りるね』

「うん、ごゆっくりー」

俺とトド松が持ってきた服から数着選び、ムーメは再び部屋を出て行った。
部屋には兄弟四人が取り残される。

「にしても、カラ松兄さんさー」

一番下の弟、トド松が呆れた顔を向けてくる。

「本当になんであの子の家燃やしちゃったの?
僕住所送っただけなのに」

「カラ松にーさん、いきなり放火はヤバいっす」

困った顔をした十四松にも責められる。

「心配するなブラザー。
俺はブラザー達のためだけに動いているだけさ…」

俺はいつものようにクールな口調で反論する。

「…まあ、その頭は心配になるよね。
こっちはそんなの頼んでないのにさ。
ねえ、おそ松兄さん」

トド松に話を振られたおそ松はチラリも俺のほうを一瞥するが、すぐにトド松のほうへ視線を戻す。
その顔はいつもの悪戯っぽいものだ。

「そーだよなー。
俺、なーんも言ってないのに」

おそ松がこの場で味方になってくれるとはそもそも思っていなかったので構わない。

「ふっ、お前たちを思って過ちを犯す俺…。
なんてギルトガイなんだ」

「あーはいはい。始まったよいつもの。
…ところであの子、本当に協力してくれるのかな」

トド松は冷めた口調で俺の言葉を流すと、話題をムーメへと変える。

「トド松、お前結構疑り深いよな。大丈夫だって」

おそ松がトド松の頭をくしゃくしゃと撫でる。
トド松はやめて、と短く言うがそれが本心でないのは皆分かっている。

「僕も怖いなぁ。
一松兄さんと、チョロ松兄さんも心配だけど、おそ松兄さんも心配」

十四松が口に手を当てて、俯き加減に話す。
彼がその行動を取るのは、考えてる時、不安な時だと知っている。

弟たちは不安なのだ。
仲の良い兄弟が、頼れる兄二人がこの場にいないこと。
そしてそれを助けるために、昨日会ったばかりの女の子に頼るしかないことが。

「十四松までどーした。
お兄ちゃん達がそんな簡単にやられるわけないじゃん」

おそ松は十四松の頭も同様に撫でてる。
どうやらその根拠のない言葉に元気付けられたのか、二人の表情は幾分か和らいだ。

「それにあいつならやってくれるって」

こういう時、俺はおそ松のように兄弟を元気づけることが出来ない。
長男と次男という肩書きは、ここまで差を持つのか、といつも思う。
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