第4章 他人に悪事を行えばそれなりに仕返しされるもの
「…今日話そうと思ってたんだけどね」
五人の乗り込んだ車は数分後には六つ子の事務所に前着いていた。
他の四人に取り囲まれるように室内に入り、今は昨日寝ていたソファーに座らされている。
対面には四人が各々イスを持ってきて座っている。
「ここまではいい?」
トド松が昨日までのこと、今日私が捕まっている経緯を丁寧に説明してくれた。
私はそれをグラスに入ったアイスティーをすすりながら聴く。
結構走ったし、車内に五人は暑かったので正直冷たい飲み物はありがたい。
『要するに君たちの三男四男が捕まったので、その犯人の情報が欲しい、と』
そして私は、今現在彼らのボスであるおそ松の殺害という目的は消失したと。
ふーん、と生返事しながらグラスの中で揺れる氷を見つめる。
「話が早くて助かる。
俺たちには時間がないからな」
カラ松が前のめりの体勢で膝の上に肘を付いて言う。
『でも、相手の交換条件は君たちのボスの命なんでしょ?
ボスだけ殺して他は見逃すってあり得るの?』
捕まった二人が生きてる証拠はないのだ。
四人の顔が少し強張ったように見えた。
それを見て、あまりマフィアの事情は知らないけど、と付け足すが、沈黙が流れる。
「…ダイジョーブ!!
兄さん達は生きてるッス!!」
十四松が沈黙を破るように、突然大きな声をあげながら立ち上がった。
声は明るかったが、潤んだ瞳には不安が見て取れる。
他の兄弟もうん、とか、ああ、とか声をあげて同意する。
私はその様子を見ながら、ため息混じりにわかった、と返事をする。
『生きてるなら、救えるんじゃない?』
約束通り情報は渡すよ、と続けると、十四松は私の両手を取ってブンブンと上下に振りながらありがとう、と言った。
私はなんだか不思議な気分になっていた。
私は、彼らの兄弟を人質にしてる人間と同じような人間なのに、と。