第3章 1.01 大助 Part.1
陽の傾き始めた街を、薬屋大助は歩いていた。
ごく普通の容姿をもち、特徴を上げるとするなら頬に貼った絆創膏だけであろう彼は、自分のポケットに入れた携帯が鳴っているのに気がついた。
「…もしもし。」
『僕だ。』
聞こえてきたのは嫌と言うほど聞き飽きた上司の声だった。
「…チッ…。何の用だ、土師。」
大助は電話の主の声を聞いて小さく舌打ちをする。
『上司からの電話に舌打ちで答えるのは如何なものかね、“かっこう”。』
「前置きはいい。さっさと用件を言え。」
土師は電話の向こうで全く君はと気味悪く笑い、用件を話した。
『…と、いうわけだ。頼んだよ、“かっこう”?』
「ふん。俺には関係ない。そっちの手違いだろ。そっちで勝手にしてくれ。」
電話の内容は、土師の手違いで新しく入ってきた新人の部屋を用意できなかったので、しばらくの間大助の部屋に住まわせられないか。とのことだった。
『そう言うと思ったよ。だからあえて言おう。これは命令だ。』