第1章 アニキの元カノ
「ねぇ、僕がやっとくから
アニキに送って貰ったら?」
布施の横に立ち
泡だらけのスポンジを取り上げる
『…泊まっちゃダメ?』
手を泡だらけにしたまま
布施が僕を見上げる
僕の返答を待つ顔は
とても不安そうで
僕の苦手な顔だ
「いつも帰るのに、珍しいね」
返事に困って少し話をずらす
そりゃ親は帰ってくるけど
仮にも今は男二人しかいないのに
無防備にも程があるんじゃない?
『うん…』
ま、僕がこんなチビでガキな女に
欲情するわけないけどさ
まぁ、アニキは…
あぁ…。アニキとイチャイチャしたいから
泊まりたいんだ
それならシレっとアニキの部屋にでも
居座っちゃえばいいのに
親は布施なら泊まったところで
なんにも言わないし
コイツにだって
文句言う相手は…ほら
…居ないわけだし……。
いちいち無関係の僕に
聞いてくる所とか理解不能
なんて言って欲しいわけ?