第8章 色香 × Green。
『今から仕事行ってくるね。
今日はブータンのTシャツ着てるよ。』
リーダーからのメール。
俺があげたブータンのTシャツを着て
わざわざ写メまで添付してくれて。
『行ってらっしゃい!
気をつけてね!』
自分がこんな状態なのに
頑張ってねなんて言えなくて
情けなくてまた涙が滲んだ。
明後日の早朝ロケ、どうなるんだろう。
俺、もう、お払い箱かな…
『お前使えねぇーな』
『もう来なくていいよ』
『代わりならいくらでも居るんだから』
するはずの無い声までが
耳の奥のずっと深い所でエンドレスリピートされて
「やめろっ…! やめてくれ…!!」
頭まで布団を被って
耳を塞いだ
― ガラッ! ―
「大丈夫か! おい!」
くぐもった声
誰のものかはわからない
布団越しに背中をさすられてるのを感じた
「うぅっ………うっ……」
止まらない嗚咽に
何も言わず
背中をさすり続ける、手。
その手がフッと離れたかと思うと
中に滑り込んで来て
布団を握りしめる俺の手をふわりと包んだ。
「大丈夫だから
怖いことなんて何もないから
心配すんな」
この手の温もりを
俺は知ってる。