第1章 葛藤 × Red。 Vol.1
俺は目の前の雅紀を
ギュッと抱きしめた。
「うん…」
躊躇しながらも抱きしめ返してくれた雅紀のその手の温もりは
何よりも温かかった。
「もう一度言うよ。
好きだよ、雅紀。」
それから数日後
俺は突然雅紀から呼び出された。
「しょーちゃーーーん♪」
1.5mほどの距離感で
取れそうなほどにブンブンと手を振る。
「だからさ、それ、もげるって(笑)」
へへっ。と笑う雅紀は
晴れやかな顔をしていた。
「ちゃんと、お別れしてきたよ。
そしたらね、『あっ、そ。』だってさ。
失礼しちゃうよね!」
雅紀が口を尖らせる。
「なんて言ったの?」
「これ以上泣きたくないから別れて!って言ったの。
二股なんかかけられてちゃ
俺の涙いくらあっても足りないから。って言ってやった!」
そっか…
「しょーちゃん、言ってくれたでしょ。
『俺なら、お前のこと泣かせたりしない』
って…」
それって、もしかして…
「好きだよ、しょーちゃん。
俺のこと、泣かせないでよ…?」
「雅紀…」
「しょーちゃん…」
「泣かせねーよ
約束する。
お前の笑顔は俺が守るからな。」