第26章 帰郷
「目が座ってきたなぁ…気に入った、お前は時間をかけてゆっくり調べ尽くしてやる。まあ、そろそろ体が痺れて来る頃だろうが」
痺れなんて全くない。
そんな効能、とっくに別のものにきりかえられている。
口内を蠢くそれにさえ変な気分になってきて、抗えそうにさえなくなってきた事態に頭が回らなくなってきた。
気持ち悪い…気持ち悪い、のに、動けない。
動いたら死ぬ…下手すれば私以外の一般人も死ぬ。
…耐えなきゃ、耐えなくちゃ。
耐えさえすれば勝機がある、勝てない相手なんかじゃない。
耐えてさえいれば、私がなんとか…
なんて気力を保とうとしているその刹那に思い出した。
自身の体が切りつけられ、それが綺麗に再生してしまったことによって始まったあの実験を。
…嫌だなぁ、こんな状態の身体にされて、今更怖くなってくるなんて。
「……死神、随分と息が荒いな?…脈もかなり早くなっ『ッッ!!!!!?』!!…、ほう、面白い反応をする」
首筋に触手を当てられてそれに過剰に反応してしまえば、虚の雰囲気が嫌なものに変わる。
今、そんなとこ触れるから…今は、ダメなのに。
じわじわと注がれ続ける毒に…それを飲み続けるのにさえ体がおかしくなってきて、まともに意識を保つのでさえいっぱいいっぱいだ。
耐えなきゃ…耐えなきゃダメ、泣いちゃダメ、怖がっちゃダメ。
こんな奴、怖くなんかない。
もっと怖い目に遭ってきた…もっと、もっと怖いのを私は知ってるんだから、これくらいのことで…
怖くないのに、おかしいな…苦しいのと体がおかしいのと、嫌な記憶のせいで震えが止まらない。
おかしいな…こんなの、なんともない筈なのに。
「おお、泣いちゃった…泣くのか、お前のような者でも。これは解体すればどんな鳴き声を上げてくれるのか、楽し____」
____切り裂き紅姫
静かに聞こえたその声。
小さくても、はっきり聞こえた。
血の刃が、大きな大きな虚を細かく切り裂いて…私の身体が解放される。
そのまま地面に落ちる前に抱えられ、痛いくらいに抱きしめられて、その人は殺気を顕にした。
「…誰を泣かせてる……誰を解体して、鳴かせるって?……虚風情が」
凄まじい霊圧に怯んだ虚を容赦なく斬魄刀で斬りつけて魂葬し、始解していたそれを元に戻す。
「……怖かったね。…一旦、うちの商店でゆっくりしよう」
『…大、丈夫』
