第22章 云いたかったこと
なんだか生きた心地のしない足取りで、仕事服に身を包んで扉を作る。
大丈夫…中也がいるんだし……カエデちゃんだって、いるんだし。
「どこに着く?」
『分からない…けど、カエデちゃんのいるとこ』
「そうか、それならお前が片付けるまでは邪魔しねえでおくよ」
頑張れ、というように優しく背中を叩かれて、それに覚悟を決めて扉を開いた。
鼻をかすめるすすきのにおい…そして、それが燃える匂いに、感じる多くの気配。
中に入るとそこは一面すすきの野原で、カエデちゃんを取り囲むように炎が燃え盛っていた。
『カエデちゃん…っ』
「!!蝶ちゃん!?なんで来て…っ、逃げないで!!!」
どうやら、殺せんせーと決闘をしている…というよりは、自分で自分の力を制御しきれていない。
中也を安全なところに移動させ、私も炎の中に入れば、殺せんせーがかなり押されているのを察知した。
『カエデちゃん、その触手!!もう使っちゃダメ!!』
「あともうちょっとなの!あともうちょっとで終わるから!!!」
ダメだ、いい返事はやっぱり期待出来ない…それにあれは、恐らく糸成君の時と同じ。
自分の意思とは関係なしに、触手に精神を乗っ取られてる。
『…っ、…手荒だけど、ごめんね!!』
「え、何言っ……ッぐ、っ…!!?」
苦しめたくはなかった…痛い思いをさせるのも、嫌だった。
けど、恐らくその触手を完璧に抜けるのなんか…こんな状況じゃあ私くらいだろうから。
能力を使ってカエデちゃんの体を無理矢理動けないようにし、そのまま彼女の体を私のところに引き寄せる。
「か、らだが…っ、動かな……!?」
『…ごめん、カエデちゃん…あと少しだから』
「っっ!!?えっ、なんで僕いきなりここに…って、白石さん!!!」
何か思いついたと言わんばかりの気配があった。
煙の立ち込めるその外側に…こちらへ歩いてくる気配を感じた。
だから移動させた、その人物…渚君を。
『何かあるんでしょう!?今なら大丈夫だから!!やって!!』
私が、カエデちゃんの神経と触手の間に壁を張っているうちに。
そこを少し、離せているうちに。
「…!…ごめん、茅野……」
ゆっくりと、しかししっかり…渚君は、カエデちゃんを助けるために…
「「…は!!?」」
「「「えっ…!!?」」」
「「「ふっ…」」」
彼女の唇に、口付けた。