第18章 縁の時間
俺は少女に一言伝えた。
お前は馬鹿だと、大馬鹿者だと。
それから思いのうちを口にする。
どちらも選べないのであれば、両方選んでしまえばいいと。
俺と少しの間辛抱するだけだ、そうすればいつか、きっとどちらも選べる時が来る。
『………ブレないのね…本当に馬鹿だよ』
「お前だろ。…帰りたければ帰ればいい、いつか必ず俺がそうさせてやる……が、俺と離れるのが嫌だってんなら…二人で一緒に行けばいい。それまでどう過ごすかは…もう分かってんな?」
『…何、どれだけ私にプロポーズしたいの。死んだ後まで一緒って……思想がロマンチックね、そういうの好き』
そしたら皆に紹介しよう、それでお帰りって言ってもらおう…ただいまって、笑顔で言おう。
少女の始まりの場所であるそこで…本当の親のいるそこで。
少女は嬉しそうに笑っていた。
これで堂々と結婚できるね、結婚報告もちゃんと出来るね、と。
そしてそれと同時に気付いた疑問点を蝶に投げかける。
「そういえば、その世界はこことも隣接してるっつうことになるんだろ?それなら、来ようと思えば向こう側からこっちに来ることだって出来るんじゃ…」
『……私は特別この能力があるから自分でどんな所にも行ってこれた。けど、基本的にはお仕事や緊急事態でもない限りは誰も他の世界には渡れないようになってるの…この世界はその点では“平和”で、お仕事をする必要がないんだよ』
「今まで移動してきた世界でも、か?」
『うん、そういう事…大体決まった世界にしかお仕事で行く事なんて無いし………それに、私のいる世界とそことの間は行き来できないようにされちゃってるから』
私が扉を作っても弾かれちゃうのがいい証拠、と蝶は俺にギュウッと抱きついた。
「成程な…なんだよ、甘えたモード復活ですってか?……もう名前読んでもいい?」
『……ッ、呼びたいなら勝手に呼べばい「蝶」ひぅ…ッ』
「…………照れてんだろ、さっきのが凄すぎて…そんなに気持ちよかったのか?」
『ふぁ、あッ…そこで喋らなっ…』
「だめだ、ちゃんと答えればいいだけの話だからな」
『…っんぁ……ッ、慣れ、てないと変なのっ…嬉し、のに恥ずかしくって……中也さんだから余計…にっ…♡』
「嬉しかったなら何よりだが、それで混乱すんのは相変わらずだな…第2ラウンドいくか?」
流石に頬を引っぱたかれた。