第15章 大切な人

『…えっと、ですね……』

「…おう」

『………その、です…ね…』

「……ああもう見てて焦れったいよ本当！！中也さあ！？君何で蝶ちゃんが話すの待ってるのさ！？馬鹿なのかい！？そうだったね！！」

「なんで手前がキレてんだよ！！！」

立原の背中に乗ったまま、顔を少し覗かせつつ中也さんの様子を伺う。
聞いていた通り、確かに覇気が無いというか何というか…

原因は間違いなく私なのだけれど。

『…あ、あの…ごめんなさい、私混乱して……色々頭おかしくなってて』

「い、いや！俺の方こそ…悪かった、何もしてやれなくて。蝶が男に囲まれんのとか苦手なのも忘れて…他の奴らに礼言うより先にお前の心配をするべきだった」

「……蝶、お前ここにいるまんまでいいのかよ？」

立原に言われてピクリと肩が反応する。
それにまたちらりと中也さんの方を覗けば目が合って、中也さんは不思議そうな顔になる。

『…ありがと、立原さ…立原。多分もう大丈夫』

「いいってことよ、なんならもう少し日頃の俺に対する態度を改善してくれたってい『考えとくね』っつってもお前じゃ…あ？」

ポカンとする立原を放置したまま、中也さんの方に近寄ってｸｲ､と上着の裾を少し引く。
すると何だというように腰を屈めて私の目の前に顔を合わせる。

そんな中也さんの耳に両手を当てて、他には聞こえないようにと言葉を紡いだ。

『…私が貴方の恋人でも、いいんですか……？』

「！なんでんな事…当たり前だろ、寧ろそりゃこっちの台詞で…」

『じゃあ、これからもっともっと甘えさせてね…私、すっごい嫉妬深い子だから』

「な…っ、は？え、お前なんでそんないきなり素直に『嫌かしら』いやいや、いいんだが…」

『いいって言うなら守ってよ？じゃないと拗ねてやるんだから』

「何だそりゃ、またえらく可愛らしくなったもんだなあおい！？」

中也さんの声に私も周りも口をポカンと開けてえ、と声を漏らす。

『あ、あの…え…？』

「何か文句あんのかよ！？あの蝶さんが俺に生意気な口たたくようになっ『ち、中也さんが頭おかしいんだって事だけはよく分かったわ』違えよ！！そんくれえ言ってくれた方が寧ろいいっつってんだ！！」

『…………じゃあ言うけど、スイーツバイキングで手離すの禁止。私から離れるのも』

「やっぱり可愛らしいもんだわお前の我が儘…あー可愛い」