第14章 わからない人
「……苦かったろ、なんで飲んだんだあんなもん」
『…中也さんの…なら、好き……』
「またお前はそういう事を…!……そうだ、お前それで、処女膜の確認って何を…?」
『!!そ、うだ……無かった!?無くなってた!?』
蝶が途端に必死な顔になったため、正直に無かったぞと口にした。
すると少女は心から嬉しそうな顔をして、涙ながらに俺にまた抱きついてくる。
『った……良かった…ッ!…そんなところまで、治っちゃったらどうしようって…っ』
「!……お前、それで…」
『…中也さんにちゃんともらってもらえて、嬉しかった……嬉しい…私、普通の人みたいに戻ってな……ッ?中也さん…?』
蝶の身体を強く抱きしめ返す。
「…阿呆、お前は元より普通の人だろうが。そんな所で怖いところがあったんなら、ちゃんと俺にも伝えとけ……っ、ありがとう…本当に」
『ち、中也さん…?なんで中也さんがありがとう?』
「……どうやら本当に俺が初めてだったらしいからなァ?挙句の果てには処理までして飲み込みやがって…今日から覚悟しとけよお前、俺の嫁だってんなら俺は容赦してやらねえからな?」
『ひ…ッ!?な、なんか嫌な予感しかしな…ッ』
「よーしよし、いい子の蝶はとりあえず服を着ようか。これ以上そのままの格好でいたらお前、俺は優しくしてやれねえぞ」
蝶は一瞬で慌てて服を直そうとするのだが、ピタリとその手を止めて俺の顔を覗き込む。
…なんだこの表情は。
『……中也さんならいい。…する……?』
「真昼間からそんな事言うんじゃねえよお前は!!!互いに仕事にならなくなるだろうが!!!」
『あ…』
結局俺が負けて自ら蝶の服を直した。
強すぎるぞこいつ、勝てる気がしねぇ。
『 治すも何もこんなにされちゃって…下着、無いのに』
そして蝶からの爆弾発言にピシッと固まり、恐る恐る蝶を見る。
そうだ、上はまだベストで隠せばいいからともかくとして、下は拙い。
「…お前、下着は?」
『カルマの家』
「カルマはこの時間は」
『学校行ってると思う』
「よし、今すぐに俺を送れ。俺が取ってくる」
『いいけど…なんで中也さんが?』
少女からの無垢で真っ直ぐな問いに、もう何も言えなくなってヤケになって声を上げた。
「そんな状態のお前を外に出して誰かに襲われたらどうするんだよお前!!」
『家なんですが』