第3章 春の日
志摩さんの頭はピンク色だった。
正確にはピンク色に近い茶色なのだけれども、中身を知っている身としてはピンクと表現してしまう。
「俺とコイツを一緒にすんな!」
「坊酷いですわ~」
何時もの光景がそこにあった。
これから入学して新しい生活が始まる。
きっと変わっていくものが沢山ある。
少しだけ恐くなってそっと竜ちゃんのブレザーの裾を握ったら、振り返らないまま背中を叩いてくれた。
背中に伝わる手のひらの温もりに安心して手を離す。
竜ちゃんはしばらく背中に手を当ててくれていたけれど、志摩さんにからかわれて離してしまった。
背中に残る温もりの欠片がより心を寒々しく感じさせた。
end.