第26章 『炭酸みたいな恋をしよう!』~櫻井×大野~
少し歩いて、海辺に出た。
白い砂浜は、そんなに広くないけどずっと向こうまで続いていて、かなり間を開けて、二人連れの恋人たちが腰を下ろしていた。
「俺達も座ろっか~?」
「あ、うん...」
砂浜に腰を下ろし、キラキラ光る海を見た。
「翔くん、素敵な場所知ってるんだね~?」
「ああ、前にさ雅紀に教えてもらったんだ、あいつこっちが地元じゃん?いいから、一回智さんと行けばいい...って」
...てっきりライバルだと思ってた雅紀が、そんなこと...
俺は、彼の屈託のない笑顔を思い出していた。
...何て可愛いヤツなんだよ、全く...
翔くんがペットボトルのふたを開けて、炭酸を飲んだ。
俺は、上下に動く喉仏に見惚れてた。
すると、翔くんは、
「飲む~?」
と俺にそのペットボトルを差し出した。
「いや、俺、炭酸は...」
「少し甘くなれば飲めるんだよね~?」
「あ、うん...炭酸が抜けたやつね...」
翔くんは、少し笑って、
「炭酸、今すぐ抜いてやろうか~?」
と言った。
「え、今直ぐ~?」
すると、もう一度ペットボトルから炭酸を流し込み、不意に俺の頭を引き寄せて唇を重ねた。
!!!嘘???
翔くんの唇から流れ込んできた泡の粒...
///ゴホッ、ゴホッ///
直ぐにむせる俺...笑う翔くん...
「もう~、急になんだよ~?」
「ははははっ、咽るか~?普通!」
「だって、急にさ...ゴホッ、ゴホッ...」
「ごめん、ごめん...甘くなかった~?」
「...うん...少し、まだ...辛かった...」
俺が見つめるその大きな瞳には、俺が映っている。
「じゃあ、今度は少しだけ、我慢してね♪」
「...うん...分かった..」
翔くんはもう1度透明のボトルから炭酸を口に含み、俺の顎に手を掛けた。
....今度は..ゆっくりと、目を閉じた。
....そっと重なる唇...
ふたりの間を行ったり来たりしたその炭酸が無くなる頃には、
その泡は、すっかり甘く、蕩けそうに変化していた。
その液体が無くなっても...
俺達はずっと、離れずにくっ付いていた...
翔くんとのキスは、少し辛い
大人の味だった...
【 END 】