第26章 『炭酸みたいな恋をしよう!』~櫻井×大野~
その後俺たちは、他愛もない話をしながら歩いた。
今までも何度も、帰り道、こんな風に肩を並べて一緒に歩いたけど、もう3年生...
それがずっと続く訳ないっていう現実が、
近付いてきてるみたいで...何だか淋しくなった。
「智くんは、地元の大学~?」
「翔くんは...」
翔くんは、サッカーで東京の進学するんじゃないかって、もっぱらの噂だった。
「俺さ、サッカーは高校までで、大学は教育学部に進もうと思ってるんだ」
「え?教育...?」
初耳だった。翔くんが先生を目指してるなんて。
「中学校の先生になって、子どもたちとサッカーしたいんだ...」
「ふ~ん...先生似合うよ、きっと」
何て...翔くんらしい素敵な夢なんだよ!!
「智くんの夢は~?」
「俺は...」
......俺は、翔くんの夢を、隣で応援すること...
な~んて。
そんなのダメだよな~...
俺の...将来は...
なんか、ちゃんと考えたことないな~...
どっか、入れる大学入り込んで、その後ゆっくり探そうかな~、何て...気楽に考えてたけど。
「智くんも、そろそろちゃんと考えなきゃね?」
「...だよね~...」
「あのさ、智くんの夢が...っていうか、やりたいこと、見つけたら、俺に一番に教えて!」
翔くんの顔を、そっと見ると、俺のこと優しい眼差しで見つめていた。
......俺のやりたいことか。
翔くんの背中越しに見える西の空は、うっすら残ったオレンジ色が、山並みと空の境を染めていた。
「じゃあ、俺こっちだから...また明日!」
「うん...お疲れ様...」
走り去る愛しい背中に、
「翔くん...好きだよ...」
そう呟いてみた。
......顔を見て、目を見て、言えたらな~...