第25章 『シノビノニノ』~大野×二宮~
【 智side 】
すっかり顔なじみのコンシェルジュが恭しく頭を下げて俺を迎える。
「あ、どうも...」
軽く片手を上げて、
余裕の顔して挨拶を返した俺は、
口笛を吹きながら、その部屋のインターホンを押した。
しばしの沈黙の後。
黙ってモニターカメラに現れたその顔は、
恐ろしいほどの無表情...
「あ、あの...」
「何か用?」
「用って、いや、えっと...」
「用がないなら帰れば」
「いや、用がない訳じゃ」
そこで、モニターは消えて、眉を下げた俺の顔が映った。
......なんだ??
最上級に怒ってるけど...
何でだ??
俺はじっと考えてみる...
...何をそんなに怒ってるんだ?
せめて、何が気に入らないのかだけでも...
俺は再度、インターフォンを押すが、
今度は全く返答がない。
気の利いたコンシェルジュは、
気配さえ消して、俺を気遣ってくれてる。
内心『またかよ』くらいに思ってるかもしれない。
......えっと。
この場合、帰ってしまっては、
彼の怒りは倍増する。
だけど、話しさえ聞いてもらえない...
俺はモニターのすぐ下に座り、
携帯を出した。
『開けてくれるまで、待ってるから』
そうメッセージを送ってみる。
既読にさえならない...
あ~///誰か帰ってきたらどうしよう。
カッコ悪いよな~(:_;)
頼むよ~!ニノ...
お願いだから開けてよ...
俺は、胸の中で何度も念仏のように、そう祈った。