第24章 『恋人たちの棲み家』〜相葉×櫻井〜
【 長野弁護士 】
その後。
この二人の消息は、終ぞ途絶えた。
暫くして、翔くんから『元気でやっている』というハガキが届いた。消印は、山陰地方の小さな町。
『運命』という言葉が存在するということは、
目には見えないが、確かにそれがあるということなのか?
人は、偶然に出会って、別れていく。
運命の歯車が、どこかで1つでも狂っていたなら、もしかしたら全く別の道で、全く違う人生を生きていったのかもしれない...
でも。
出逢ったことそのものが、
神が定めた逃れようのない運命なのだとしたら....
今もきっと、ふたりで肩を寄せ合って生きているのだろう...
運命に逆らわず...
あるがままを受け入れ...
「長野先生、今度研修に入る方をお連れしました」
「あ、はい...」
俺は、抱えている裁判の書類に目を通しながら、その人を迎えた。
「お久しぶりです...」
「......しょう...くん?」
聞き覚えのあるその声に顔を上げると、すっかり大人びてしまったあの少年が立っていた。
最も、あれからもう何年経ったか...?
「ご無沙汰しています。よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げるその青年を、俺は眩しいものを見る目で見つめた。
彼は、大学を卒業する前に司法試験に合格したそうで、エリート中のエリート、と言う訳だ。
その日の仕事終わり。
挨拶をして帰っていく翔くんが、窓から見えた。
急ぎ足で信号を渡り、その先にいる人に笑顔で近付いた...
....なんだ、迎えに来ていたのか...
思わず笑みが零れた俺の視線に気付く筈もない距離なのに、迎えの彼はゆっくりと上を見上げて、丁寧に頭を下げた。
これまた、見えるはずはないにのに、俺は弾かれたように右手を挙げた。
......俺は、人混みの中を、寄り添うように歩いていくふたりを、見えなくなるまで見送っていた...
【 END 】