第9章 『恋よ、永遠になれ』 ~大野×二宮~
【二宮side】
今夜はね、
『ストロベリームーン』っていうんだって。
地球と月の位置関係で、
月が赤く見えるときがある。
それが、夏至のこの頃にしか
見ることが出来ないらしく、
今夜がその、
珍しい夜...らしい。
その『ストロベリームーン』に
俺は大野さんと二人っきりで
ご飯に行くことに成功した。
さかのぼること数が月前。
俺はアカデミー賞の
最優秀主演男優賞に輝いた。
そのご褒美に、
何かプレゼントをくれる、
っていう大野さんに、
「じゃあ、二人で
ご飯食べに行きたい!」
「そんなこと~?そんなん、
いつでも行けるじゃん...」
いつでもなんて、行けないじゃん!
二人で...っていうのが
すごく重要なのにさ、
この人、全然分かってない...
事実大野さんと二人で...
なんて、20年近く一緒にいるのに
片手で足りるくらいしか、
行ったことない('ε'*)
しかも、途中から誰かが
合流したりして...
最後まで二人っきり、なんてことは、
今まで
一度だってない!
人の気も知らないでさ~//
その約束をしてからも、
なかなかその日はやってこなくて...
そして、今宵。
奇しくも空には
『ストロベリームーン』が赤々と輝く夜。
テレビ誌の取材終わり、
急に大野さんから切り出してきた。
「これから、飯、行く?」
「えっ?..いっ、今から?」
「ダメ?」
「ダメじゃない!行こう、
飯、直ぐに行こうよ!」
俺は、邪魔が入らないうちに、
って、焦って彼の腕を掴んだ。
「なんだよ~..そんな、
腹減ってんのぉ?」
大野さんはそう言って笑った。