第13章 漆黒
~1126号室~
浴槽の淵に置いたビールの缶から、雫が滴ってる。
それを指でなぞりながら、ぬるいお湯に浸ってる。
頭の中を、一晩だけの恋人たちの顔が何回も行き過ぎる。
わかってる…
こんなこと、続けたってどうにもならない。
でも、やめることができない。
止まることができない。
一体、俺の欲望はどこまで膨らむんだろう。
全部手に入れても尚、まだ欲しい。
そっと自分の中心に手を伸ばすと、緩く握り込む。
「っ…あ…」
ねえ…ドキドキする
「あ……んっ…っ…」
こんなに待ってる
「いっ…ああっ…」
こんなに期待してる
「も、あっ…だ、め…」
もう、破裂しそう
「もっと…もっとしてぇっ…」
もう、逃げられない――――
永遠に出ることのない迷路から
俺の吐息だけが聞こえた。
俺は、ミノタウロスのように
まだ、まだ彷徨ってる。
この、情念が
この、身体が
どこにも逃がすことができない、迷宮…
それが俺の…
本当の、正体
【 to be continued… 】