第13章 漆黒
俺の足元に蹲る身体を引き上げて抱きしめた。
「俺はあんたが好きなんだっ…」
「…え…」
「なんで俺一人のものになってくれないんだよ…」
「…ごめん…」
「なんで俺だけじゃだめなんだよ…」
「ごめんなさい…」
謝って欲しいわけじゃない。
こう言えば、俺のものになるわけじゃないのもわかってる。
だけど、言わずには居られなかった。
「身体だけ与えて、心はくれないなんて…どんな拷問なんだよ…」
「違うっ…」
叫ぶように言うと、俺の身体にしがみついた。
「今、この時だけはっ…全部…あげるっ…」
「え…?」
「だから、許して…俺を許して…」
泣きながら俺の唇に口づけた。
「こんな俺を…許して…」
初めてのキスだった
「なんで…?」
「ごめん…俺は…」
「なんで俺を選んでくれたの…?」
何度も身体を重ねているのに、キスをしたのは初めてだった。
執拗に拒否されていたから…
「…優しいから…それに…」
「それに…?」
「…絶対に…俺を、捨てないから…」
わかっていて…
わかっていても尚、俺はこの人の作った罠に嵌りに行くんだ…
「今だけ…」
「え…?」
「本当に、今だけ全部くれるの…?」