第9章 退紅(あらそめ)scene3
次の日から宮城入りだった。
そんなタイミングであの写真を見せられて、動揺しないわけなかった。
家に戻ると、智くんは居なくて…
そこで俺はどうしていいかわからなくなった。
二人で築いた、二人のための家。
智くんの匂いと、俺の匂いの混じる家。
幸せな日々を送っていたのに、クレバスに落ちていくような絶望感。
一体、俺は何をしていたんだ…?
智くんの何を見ていたんだ…?
専務はあれが智くんの彼女だといった。
二人で焼肉いったり、釣りに行ったりしてたって…
智くんの家にも上がり込んで、半同棲みたいな形になってたって…
思考が止まった。
気がついたら俺はホテルに居た。
宮城に持っていく荷物が傍らにあった。
何も考えたくない。
ベッドに潜り込んだら、スマホが鳴り出した。
ためらいながら手に取ると、そこには”智くん”と表示されていた。
着信を切って、拒否設定した。
今は…なんの言い訳も聞きたくない。
智くんの気持ちが俺から離れてしまったことを…
俺は認めることができなかった。
その事実を…受け入れる準備はなにもできてなかった。
枕を握りしめて目を閉じた。
でも、俺に眠りは訪れなかった。