第7章 ショコラscene3
「…やあ…これは…」
先生は椅子から立ち上がった。
すぐに翔ちゃんをソファに座らせた。
「こんにちは…私は行長といいます。あなたのお名前は?」
「美々子…」
「そうですか。美々子さんですね…よろしくお願いします」
そっと翔ちゃんの額に手を置く。
やっぱり、先生には全てわかるんだ…
「リラックスしてくださいね。美々子さん…」
翔ちゃんの身体から力が抜けていく。
ソファにもたれかかると、翔ちゃんは目を閉じていた。
「相葉さんは隣の部屋へ…」
「いえ…僕は…」
「いけません。さあ…」
先生は怖い顔をした。
奥さんに背中を押されて、俺は隣の部屋に入った。
襖越しに、隣の声は聞こえてこない。
いつも…
いつも翔ちゃんは、ここで待ってくれてる…
どんな気持ちで待ってたんだろう…
机に肘をつくと、ぎゅっと握った拳を額に当てた。
いつの間にか、奥さんが部屋に入ってきてた。
「相葉さん、お菓子いかがですか?」
微笑んで俺に、菓子鉢を差し出した。
「…ありがとうございます…」
「櫻井さんもね…いつもそんな顔して、座ってましたよ…」
「え…」
「あなたのことが心配だったんでしょうね…」