第5章 ロザリオ
倒れこんだ瞬間、エレベータの扉が閉まった。
「潤っ…」
翔くんの声だけ聞こえた。
上昇する箱の天井を見上げた。
「はは…参ったな…」
腹を押さえたまま、立上がる。
できるだけ、あの二人から離れないといけない。
1階で降りると、通用口から直接外に出た。
血が垂れてきて困った。
タクシーに乗れないな…
歩いていける範囲の病院ってどこだっけ。
カクンと膝から力が抜けた。
近くの植え込みに倒れこんだ。
そこで、力が入らなくなった。
アヴェ・マリアが聴こえる…
どこから…流れてるんだろう…
どうか…赦して…
全てを…赦して…
祈りは通じた。
俺はどうなってもいい…
救ってください…
闇が、目の前を覆った。
【END】