第8章 整理整頓。
魔法薬学の準備室にはもちろんのこと、生徒が出入りする教室にもたくさんの材料が置いてある。
大概が瓶に詰められているのだが、統一性の無い配置とラベルが汚れていたりして、生徒達は材料を揃えるのに四苦八苦することが多かった。
スネイプが生徒数分用意することもあるが、多くの場合は生徒が自分で材料を探し出さなくてはならない。
見当違いのところを探しているとスネイプからネチネチ文句が出るので、生徒は材料を揃えるのにも気を張らなければならなかった。
ある日の授業終わりに、キラは前々から思っていたことをスネイプに進言することにした。
「スネイプ教授、一つ提案があるのですが」
「それが耳を貸すだけの画期的なものだという自信はあるのか」
「もちろんです」
時間が惜しいと言うのならむしろこのやり取りが無駄だと思うのだけど、と呆れたい気持ちを隠しつつ、キラはニコリと頷く。
「魔法薬の材料の並べ方を変えるんです。アルファベット順にするか、もしくは虫、動物、植物などの種類に分けて――」
「却下だ」
「ええっ?! どうしてですか? 毎回あちこち探すのなんてどう考えても非効率的です」
「フン。これだから馬鹿は困る。材料はこの上なく合理的かつ効率的に並べられている。以上だ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「待たん」
振り返りもせずにスネイプが準備室に入って行ってしまった。
(どこが合理的かつ効率的なのよ…)
生徒が引っ掻き回すから、授業の前と後とでは材料の位置が変わっているはずだ。
スラグホーンが魔法薬学を担当しているときはこんな風にぐちゃぐちゃにはなっていなかった。
雑然とはしていたが、もっと材料を見つけやすかった。
(スラグホーン教授の並べ方に慣れてたかどうか、っていう問題ではないはず…)
一体何が違うのか。
そして何を以てして合理的というのか、キラには理解できなかった。
数年後、キラが魔法薬学の助手としてスネイプにつくまでは。