第76章 ヒソップ
それでも欲しい人材だったってことか…
「ああ。そのへんはうちの会社はしっかりと制度があるから。気にしないでいいと思う。総務の子に、制度の説明してもらおうか?」
「あ、それはもうしていただきました」
「そっか。なら良かった」
「すいません。課長には話が通っているのだとばかり思っていました」
「いや、大野さんが所属になるのは今日正式に決まったんだ。俺が部長に聞いておけば良かったんだけど…」
「えっ…今日」
「うん。以前から打診はあったんだけど、今日決まったみたい」
ちょっとぽかんとしたあと、困った顔をして笑った。
「…急なんですね…」
「まあ、部長忙しいから…」
「そうですよね…」
「いつ来てもいいように、資料揃えておいて良かったよ」
「えっ。来ないかもしれないのに、用意しておいていただいたんですか?」
「…ああ。まあ、ほら念の為だよ」
そういうと、ちょっと嬉しそうにした。
「ありがとうございます」
はにかんだ笑みに、思わず見とれてしまった。
「…課長…?」
「あ、ああ…」
なぜだか、美しいって思った。
男なのに…とても美しいって…
「…なるべく、ご迷惑は掛けませんから…」