第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
夢を見た
あけぼの荘の裏手の岸壁
萌香が両手にちびどもを抱っこして
その横には微笑む翔と大野が寄り添って立ってる
俺と雅紀は船から手を振ってる
とてもしあわせで
とても…
「父ちゃん?」
「とーちゃん?」
小さな手が俺の顔を叩いている。
でも眠くて…目が開けられない。
「どうした?」
「父ちゃん泣いてるの」
「ねんねしてるのに泣いてるの」
「えー?あ、ホントだ…」
顔に濡れたタオルが押し当てられた。
「おまえたちお風呂行きなさい。雅紀が待ってるから」
「はあい」
「わかったぁ」
ぱたぱたとちびどもの足音が聞こえる。
「お父さん?起きて…」
翔の声は穏やかで。
そんなんじゃ起きられねえよ…
「もう…智くん、起きて?風邪ひいちゃうよ?」
大野も寝てるのか…
「翔くん…」
「起きて?お部屋、一人で行ける?」
「ああ…大丈夫だと思う…」
「俺、お父さんを部屋に連れてくから…」
「一人じゃ無理だろ…俺も手伝うよ」
なんだか知らないが翔と大野、二人がかりで部屋にぶちこまれた。
「ふう…これでよし」
ベッドに寝かされ、新品の布団を被せられた。
「ここ、お父さんとお母さんの寝室だったんだ」
「そっか…初めて入った…」
「小さい頃はここで、俺も雅紀も寝てたんだよ…」