第67章 プロローグ(仮:めりくり)
「はい、カーット!」
監督の声がかかると、一気に現場に音が戻ってくる。
「櫻井翔さん、これにてクランクアップです!どうもお疲れ様でした―!」
スタッフがバスローブを俺に掛け、花束を手渡した。
「どうも、お疲れ様でした…」
なんだか知らないけど、この現場は、今年俺たちが演じた役を煮詰めたような話で…
でもなんで最後、こんなことになるんだ?
納得行かなかった。
一人で控室に戻る最中、視界を何かが横切った。
「ん…?」
もさっとした…あれは…しっぽ?
「あっ…あれはっ…」
急いで駆けつけて、その物体の襟首を掴んだ。
「てめえ!まさか!」
「ひゃっ…ひゃあああっ…みぃつかったぁぁぁ…」
それは、リスのきぐるみを着たのさまじょだった。
「おまえなのか…このドラマの企画!」
「ひぇぇぇぇ…黙っててすいませんでしたぁぁ…」
「あああ!だから、こんなことに…もおおお!」
「だってぇ…皆さん、私の企画だと出てくださらないじゃないですぁかぁ…」
「当たり前だろっ…」
のさまじょは逃げようともがもがしている。
「だって、あにゃ先生のとこの出来が良すぎて…こうやって皆さんに息抜きでもしていただこうかと…」
「ばかやろお!なにが息抜きだ…また、俺…ニノにケツを…」
その時、スタジオから出ていた他のメンバーが戻ってきた。
「あれ?翔くんどうしたの?」
「なーに掴まえてんだ?あっ…」
「ええっ…また出たの!?このでっかいリス!」
「も、もしかしてこの企画っ…」
「ああ…俺たち、嵌められてたんだよ…」
一同がっくりと肩を落とした。
「あっ…」
その隙きにのさまじょは素早く逃げ出した。
「まっ…待てっ…!」
のさまじょはへへ~んと笑って振り返った。
「あにゃ先生のとこでいい演技ばっかりするからですよっ!悔しいんだからっ!」
そう言って遥か彼方に逃走した。
「ま…まてこのやろ…」
しかし、力が抜けてもう追いかける気力も残ってなかった。
「…翔ちゃん…もしかしてさあ…」
「ん?なあに?智くん…」
「また、ボツなのかなあ…」
「…だろうね…」
嵐の受難は…いつまで続くんだろう…
がっくりしていると、のさまじょが戻ってきた。
「あ、あの…次のお仕事始まりますんで…スタンバイお願いします」
「「「「「ええーっ!?」」」」」