第65章 仄暗い奈落の底から -prequel-
その5人は、小さい頃からの幼馴染で…
幼稚園も小学校も中学校まで一緒だった。
高校は学力の差があって別になったが、それでも放課後は誰かの家に集まって昔と変わらない時間を過ごしていた。
古寺の門前町だった場所。
今では地下鉄の沿線で、オフィス街にも近く昔からの景観を残しながらも日々変化をしていく街。
そんな街に生まれた5人は成人しても、尚、いつも一緒だった。
櫻井は大学に進み、一部上場企業に就職した。
大野は大学を卒業後、祖父の跡を継いで商店街の入り口にある仏具屋になった。
二宮も大学を卒業し、家業を継いで玩具店を改装しゲーム屋の店主になった。
松本と相葉は一緒に通っていた大学でベンチャー企業を起こし、二人体制で今でも事業を続けている。
それぞれが順調な人生を歩んでいた。
いや、そう思っていた。
あの瞬間が訪れるまで…
10月の初め、商店街の近くにあるバーで久しぶりに5人が集まる。
個別には頻繁に会うとはいえ、社会人になってしまっては昔のようには集まれない。
今日は松本の誕生祝ができなかったから、代替日というわけだ。
予約してあった半個室のボックス席に先着していたのは櫻井で、相葉と松本が連れ立ってやってきた。
「お、早いね。翔」
「おう…久しぶり」
「元気だった?あ、俺、まずはグラスでビール」
「俺も」
「翔もそれでいいだろ?」
「ああ…」