第62章 新・忍びのむに

「だってあんなに落ち込んでたじゃないか…今でもあいつのこと好きなんじゃないのかっ！？」
「それでも…俺はここに戻ってきたんだが？」

無門の視界にいる潤之介がぐんにゃりと歪んだ。

「俺は…無門殿と生きたいと思うたのだが？」

熱い潤之介の手は、優しい。
どこまでも優しく無門を包む。

こんなことも、初めてだった。

人のぬくもり…人の優しさ…
そして、愛おしいと思われ大事にされること…

潤之介はなにも無門に求めては居ない。
ただ、ここに居る無門を愛しているのだ。

言葉では上手く説明できないが、無門はそれを理解した。
だってこの旅の間、潤之介は無門の嫌がることをしなかった。
もしも潤之介が男色家で身体だけが目当てなら、とっくにあの熱を出した夜に無門を襲っていても不思議ではないのだから。

ただ、無門のことを見守り、一緒に居てくれたのだ。

「泣くではない…」
「だって…」

ぼろぼろぼろぼろと無門の目から、涙がこぼれる。

「そんなこと言われたの、初めてだ…」

潤之介はちょっと意外そうな顔をして、それから破顔して無門を抱きしめた。

「そうか…嬉しいことを言う…」

ぎゅうっと無門を抱きしめて、潤之介は嬉しそうに笑う。