第62章 新・忍びのむに
「どうしたのじゃ…身体が辛いのか?」
首を横に振った。
「無門殿…」
弱りきった声が聞こえて、止めないと思うのだがなかなか思うようには行かなかった。
無門の涙は潤之介の玉のような肌を滑り落ちていく。
諦めたのか、潤之介は無門の頭を胸に抱き寄せた。
「気が済むまで泣かれい」
子供にするように、頭をずっと撫でている。
そんなこともされたことがなかった。
小さな頃から自分をこうやって抱きしめる腕もなく。
悲しいと思っても慰めてくれる手もなく。
存分に泣かせてくれる胸もなかった。
今、この瞬間、なぜ自分がこのようなことになっているのかわからない。
わからないが、どうやら潤之介はこんな子供みたいな行為を許してくれているのは感じる。
思い切り泣いてやった。
それこそ声を上げて泣いてやった。
やがて、涙も尽きた。
潤之介は傍らの手ぬぐいを手に取ると、無門の顔をそっと撫でた。
「さ…寝られよ…」
腫れぼったい無門の瞼に手を置いて、微笑んだ。
「熱が下がるまでこうしておるゆえ…」
なんだかそれを聞いて安心した。
そのまま無門は体の力を抜いて、眠りに落ちた。
こんなにぐっすりと寝るのは、初めてだった。