第62章 新・忍びのむに
黒小袖からぬっと伸びてきた手が、無門の袖を掴んだ。
瞬間、虚無僧の大掛絡(だいから)がバサリと橋板に落ちた。
「ちぃっ…」
文吾の舌打ちが微かに聞こえる。
誰一人立ち止まること無く、相変わらず三条の橋の上には人々が行き交っていた。
虚無僧の集団は、一人の僧を残して橋を渡りきった。
「文吾…行くぞ」
「わかった…」
無門への暗い復讐心を秘めたまま、文吾は後を追った。
その気配を背中に感じながら、無門もまた橋を渡り切る。
この後文吾は桃山文化の爛熟する中、大盗賊石川五右衛門として、京の都に名を轟かせることになる。
これは、その前のお話…