第58章 Thousand of …
「やべ!遅刻する!」
「ほらほら、慌てないで?」
結局、あなたは弁当当番やってしまって…
ほんともう、そういうとこ意地っ張りよね。
「じゃあ行ってくるね!智くん!」
「はい。いってらっしゃい」
あなたは俺の後ろをちらっとみると、いきなり俺を抱き寄せた。
「ふあっ!?」
ぶちゅーーーっと唇がくっついて離れない。
「んあ…」
「ふう…ごちそうさま…」
「も、もうっ…!朝っぱらから…!」
「あ、今晩、舞があいつら預かってくれるっていうから、二人でゆっくりしような」
「えっ?」
「いってきまーす!」
真っ赤になった顔を押さえながら見送っていると、雅紀と和也と潤が俺の横をすり抜けていった。
「朝っぱらから目に毒だよ…とうちゃん…」
「そうだよ、いちゃつくなら場所考えろよな?」
「男同士のちゅー初めてみた!とうさんやるなあ…」
三人してくるっと俺を見上げると、にたりと笑った。
「こ、こらおまえらーーーー!」
「やああ!とうちゃんが怒った―!」
「こええ!さっきはあんなにかわいかったのに!」
「とうちゃん、いってきまーす!」
手を取り合って走っていく子供らを、今度は玄関にへたり込んで見送った。
「はあ…なんなんだよ…もう…」
きゅっと顔を上げて、キッチンに戻ると後片付けをして仕事部屋に入る。
「さて…俺も始めますか…」
仕事机の傍らには、俺たち家族の写真が載ってる。
俺たちの家族のかたち…
世間から見たら歪かもしれないけど…
それでも俺は、みんなで一緒に生きていきたい。
写真立てを手にとって、あなたを撫でると心があったかくなった。
「あなたがいるから…俺も頑張れるんだよ…?」
一緒に、生きていこう
一緒に、歩いていこう
子どもたちを撫でると、力が湧いてきた。
「さあて…仕事始めるか!」
幾千の夜、幾千の昼をこれからも一緒に…
【Thousand of … 終わり】