第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
いつまでも動かない二人の影を見つめていた
潤…
あなたは本当に俺のこと好きで居てくれたと思う
だけどね…
愛してるのは、あの人だけだったよね
最初から、わかってたよ
世界でただひとり
俺だけが、それを知っていた
その事実だけで…
俺は充分だったんだ
だから、俺、ずっと身代わりしてたんだ
あなたが笑えるようになって、一人で立てるようになって…それまでって思ってたけど…
あなたの愛は、深かった
だから、手紙を書いたんだ
あの人の気持ちを知りたかったから…
「……愛してるよ……」
届かない思いでいい。
そう思えるほど、俺もまたあなたを愛してた。
だけど…俺じゃあなたをしあわせにはできないということも、わかってた。
あなたがずっと追い求めていたのは…あの人だったのだから…
そしてあの人もまた、求めていたのはあなただけだった。
長い間、手紙を交わし続けてそれがよくわかった。
そして、この人になら…
あなたをしあわせにできるって、俺は確信したんだ。
桜の満開の下
微笑み合っていたあなた達は、本当に綺麗だった
本当に美しかった―――
俺の望みは…ただひとつ
愛する人に、本当にしあわせになって欲しい
桜の木の下に佇む俺を、あなたはまっすぐに見つめた
「さようなら…」
これで、いい…
俺の恋は…この桜の木の下で…