第48章 【Desire】20 玲聖さまリクエスト
松岡は口を割らなかった。
何時間も尋問をし、諦めた大野はふと櫻井のことを訪ねた。
「櫻井を…知っているのか」
松岡はこの時初めて口を開いた。
「…あっちはどう思っているかわからないが、友人だった…」
「そうか…あいつに反乱軍の知り合いがいるなんて聞いたことがなかった…」
「俺達のことは、何も…?」
「ああ…聞いたこともない…」
大野は二宮に、相葉と松本を呼びにやらせた。
4人だけで松岡と向き合った。
「あんたたちが…?」
「ああ…それぞれ知らずに櫻井さんと友達になっていたんだ…あの人が俺達のことを伝えてないというのは本当なのか?」
「ああ…あいつは融合派で…」
そこまで言うと松岡は口ごもった。
「融合派…それじゃあ陸軍での立場はかなり…」
「ああ…だから危険な使者の役割なんか振られるんだ…それでなくてもあいつは…」
「松岡さん…?」
「あいつは…幹部たちに…」
松岡の口から伝えられた衝撃的な事実に、4人は黙り込んだ。
「…このままだとあいつはダメになる…俺はあいつのことを、幼い頃から弟のように思ってきた…あんな仕事をさせるために中尉に推したんじゃない…!」
握り拳をテーブルに叩きつけた。
「あんたたち…あいつを…櫻井を…友人だと思っているなら…救い出してやってくれないか…?」
「…だから、あんな儚げだったんだな…」
松本がそれぞれの前に酒の入ったグラスを置くと、全員一気に飲み干した。
「なにもかも諦めたような顔してさ…まだそんな年じゃねえだろ…」
「俺たち…櫻井さんに騙されたわけじゃなかったんだな…本当に友情から…」
「相葉さん…」
遠くを見つめていた大野は、何かを決したように立ち上がった。
「大野さん」
松本の視線をしっかりと受け止め、大野は笑った。
「信じよう」
その後、空軍と海軍が連合反乱軍側について、勝負は決した。
ロシアと中国の連合軍は日本海で引き返していった。
日本は、救われた。
救い出された櫻井は、自決間際だった。
松岡の証言などもあって、罪一等を免じられた櫻井は、新政府に参画していくことになる。
レジスタンスたちの戦いは終結したが、彼らの話はまだ…
続いていく
END