第37章 【Desire】9 mimimamaさまリクエスト
駅の改札を出ると、雨が降っていた。
「あちゃ…傘、持ってないや…」
しょうがないからビジネスバッグを頭に乗せて、走り出した。
駅からちょっと走れば、商店街がある。
ここは俺の庭。
そう、俺の生まれ育った場所だ。
商店街の入り口には、智くんの店。
爺さんから引き継いだ、古美術を扱う小さな店。
近くに大きな寺があって、その門前町として栄えた場所だから、線香みたいな仏具も扱っててそこそこ繁盛してる。
ここまで走れば、傘を貸してもらえるだろう。
「あ、もう7時過ぎてるか…」
智くんの店は早じまいだから、その2軒隣の和也の店までいかないとかな…
和也のお店は、ゲームショップ。
元はおもちゃ屋だったのを、和也が中古も扱うゲームショップに変えたのだ。
少なくなったとは言え、まだまだ子供もたくさんいる。
昼間は、子どもたちの遊び場になってた。
雨脚が強くなってきた。
たどり着いた和也の店は、もう閉まってた。
「あれ…」
いつも9時近くまで店を開けてるのに…
定休日でもないのに珍しいな。
店の軒下で途方に暮れる。
増々雨は激しさを増していた。
しょうがない、ずぶ濡れ覚悟で飛び出した。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。