第34章 【Desire】6 はりん燈汰さまリクエスト
「ようこそ!Club Kaiserへ!」
花の匂いが漂うフロア。
芳香剤なんか置いてないのにね。
薄暗いフロアには、夜の蝶…もとい、夜の皇帝たちが今夜も女たちを従えている。
「きゃああ!翔ちゃん!会いたかった!」
「潤くーん!今日もドンペリ入れるからね!」
女たちは、皇帝を従えてるつもりなんだろうけど…
実はその手のひらで踊らされてるだけなんだよね。
ここ、Club Kaiserには人気ナンバーワンが二人いる。
この店の古株、翔さん。
新進気鋭の入店一年目、潤さん。
毎月、ナンバーワンを争っている彼らは、やっぱり至極仲が悪い。
所属する皇帝たち(一般にはホストという)も、翔派と潤派に分かれていがみ合っている。
それが皇帝たちのサービスを良くして、店の売上も上がるってわけで…
オーナーはほくほくしてるっていうね。
俺?俺はウエイターの二宮ってんだ。
今はまだ見習いでウエイターだけど、そのうち皇帝としてデビューする予定。
「ヘイ!ウエイター!」
ほら、今日も始まった。
「智子お嬢様に、カクテルタワーの準備を!」
「翔ちゃんの売上のためなら、智子頑張る!」
「智子、無理すんなよ…ほら、もっとこっちこいよ」
「こっちもだ!雅子お嬢様にカクテルタワーだ!」
「潤く~ん…あーん、こっち見て?もう、雅子頑張るうう!」
「俺の瞳は、君を見つめるためにあるんだよ?」
あほだ。