第30章 【Desire】2 すぃさまリクエスト
後からすぃちゃんが連れてきた白い服を着た老人が、雅紀の出産を手伝って、なんとそこには可愛らしい二匹の子猫が生まれた。
我々は、ただただ呆然としている。
雅紀は雌だったのか…
しっかりと、その子猫は智と同じキジトラの毛皮を纏っていた。
「にゃふ…?」
しかし、もう一匹の子猫…
「にゃふふ…?」
これは、茶トラではないか。
よくよく眺めてから後ろを振り返ると、和也と智は座敷の隅で小さくなっていた。
吾輩と潤は、二猫に迫った。
「なーふ?」
どういうこと?そう潤が問う声音は、いつもよりも高い。
怒っている証拠だ。
「あ~おあおあお~ん…」
「にゃおん…にゃおにゃお?」
いや、だってなあ?
雅紀がふざけてくるから、首の後ろを噛んだら…
雌のようないい匂いがするから思わず…
「にゃふ?」
「な~ふ?」
で?
腰振ったってわけ?
潤がお下品なことを聞くが、この際構っていられない。
「あ~…」
「にゃ~…」
二猫が言いよどんだ瞬間、また雅紀が呻き声を発した。
「にゃにゃにゃーっ!」
後から、もう一匹生まれた。
その毛皮は、吾輩と同じサバトラの毛皮であった。
「な~ふ?なふ?」
なに?どういうこと?と潤が我輩に迫ってくる。
「にゃふっ…にゃふっ…」
待てっ…身に覚えがないっ…
そう言って後ろに後ずさった瞬間、潤の身体が舞い上がった。
「な~~~~ふうううう!!!」
俺だけ仲間はずれにしやがって~~~~!!!
「にゃにゃーーーっ!」
けたたましい雅紀の鳴き声で目が覚めた。
「にゃふっ!?」
慌てて飛び起きると、吾輩と潤はまだ布団を被っていた。
「にゃふ…?」
なんだ夢だったのか…
庭を見ると、雅紀が植木の影で踏ん張っているのが見えた。
…便秘だったのか…
そうである。
雅紀は立派なタマタマを持つ雄なのだ。
何度も目撃しているはずなのに…
なんでこんな夢をみたのやら。
縁側では、智と和也が伸びをしながらそれを見守っている。
こんなに騒がしいのに、潤はまだ布団のなかで丸まっている。
踏ん張りきってすっきりとした雅紀は、にこにこしながら座敷に戻ってきた。
そのまま五猫で固まって縁側で昼寝をした。
今日も、平和な一日である。
おわり