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ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第26章 遺書




和也とのそんな会話を思い出した。


足元が急に崩れたような感覚に襲われる。
立っていられなくて、壁に手をついた。


”もう…しょうがないなあ…忘れてたんでしょ…?”

「ああ…ああ…ごめん…忘れてた…」

”じゃあ、今からでもいいから…約束、守って…?”

「ごめんな…ごめん…和也…」




”お願い…”



”…最期のお願いだよ…”




ベッドに近づくと、青白い頬を両手で掴んだ。
ほんのりとした体温…

ゆっくりと、唇に口付けた

「今…約束守るから…」

身体に刺さる管や、付いてるコードを全部抜いた

そのまま、ずっとその細い体を抱きしめていた

体温がなくなるまで



”ありがとう…”



ぼんやりと開いた目を手のひらで閉じた。

しっかりと瞼に焼き付けたその顔は…

微笑んでいた



「…ほんとに良かったの…?」
「え?何が?」
「海に散骨なんてさ…」
「いいんだよ…だって和也が望んだことだったんだから」
「でも…」
「いいの。これで」

丘の途中で、智は止まった。

「この先は、一人で行きなよ。俺、待ってるから」
「ああ。ありがとな」

一人でその丘を登りきると、目の前には海が広がった。
二人で来たときと、何も変わらない景色。
圧倒的な、青だった。

懐から、和也の灰の入った瓶を取り出した。

「おまえなあ…ここの埋葬許可取るの大変だったんだぞ?」

”そりゃ、すいませんでしたね…”

「本当、最後の最後までワガママだなあ…」

”でもそんなのに惚れたの、あなたでしょ?”

「ああ…そうだよ…」



手のひらに、白い灰を出すと
湖風で舞い上がった

「ほら…行けよ…」

”ありがとう…”

「行っちまえよ…」

”ありがとうね…”


舞い上がった灰を、力いっぱい抱きしめた


「和也ぃっ…」






ありがとう…

ありがとう…





愛してたよ

これからも愛してるよ




だから、俺のことは忘れて…




しあわせになってね







”まーくん…”







和也の声は



風に乗って



灰とともに海に還っていった









END
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