第19章 Eternal YOU
「翔、早くして」
「申し訳ございません…少々お待ちを…」
大きな鏡の前。
僕と、執事の翔が映ってる。
「遅刻する…」
「お待ちを…糸くずが…」
僕の後ろに立って、背中を翔の指が這っている。
「あ…」
感じる刹那…
翔の刺すような視線が、鏡越しに僕に突き刺さる。
「もう…いい…」
「畏まりました」
その長い指が、僕の肩に置かれた。
「いってらっしゃいまし…和也様…」
急いで自室から駆け出した。
翔の足音は聞こえない。
毎朝、毎朝…
僕はこうやって翔の視線に嬲られてる。
僕の気持ちを知っているくせに…
屋敷の扉をメイドが開けると、黒塗りの車が待っている。
運転手が扉を開けると、無言で乗り込む。
「いってらっしゃいませ。和也様」
使用人たちが扉の前で頭を下げる。
その中に…翔の姿はなかった
「はあ…」
「なんだい、二宮くん。ため息なんかついて…」
学友の大野くんが話しかけてくる。
「いや、なんでもない。気にするな」
彼は、僕の前の席に腰かけると、いたずらっこのような微笑みを浮かべた。
「なんだよ」
「まるで、恋でもしてるような顔してるな…」