第14章 Happy Birthday…JUN
「ただいまー」
誰も居ないとわかっている我が家に帰る。
返事がないとわかっていても、つい習慣でただいまと言ってしまう。
俺は独り言が多いんだ。
「今日も暑かったねえ~…」
冷蔵庫からビールを取り出しながら、話しかけるのは冷蔵庫。
わかってる、これも独り言。
台風が近づいているから湿度が凄い。
エアコンを入れると、テレビの前のソファに座り込んだ。
「…疲れた…」
日付が変わって、今日は俺の誕生日。
仲間たちはパーティを開こうって言ってくれたけど、今日はおそくまで仕事で。
こんな仕事だから深夜から飲み始めることなんてザラなんだけど、今、冬のツアーに向けて予定がギチギチ…
映画を撮り終わったばかりだけど、レコーディングにリハに…
俺は休まる暇がなかった。
改めて後日って言ったら、皆納得してくれて。
今の時期の俺は、毎年のことなんだけど忙しいこと知ってるから…
それに今年は…いつもの年と違う。
先輩のグループがあんなことになって…
結末は、なんとなくわかってた。
だけど、こんな急展開になるなんて誰も思っていなかった。
だからこそ…俺達の冬のツアーは、来年への試金石で…
気負わなくていいって、皆言う。
だけど、さ。
そんな簡単なものなわけ?