第11章 藪の中 reborn
苦しい…
揺れる視界
締め付けられる喉
何が起こってる?
翔の苦しそうな声が聴こえる。
はっきりしてきた視界に、潤が写った。
「な…に…?」
何かかが喉を圧迫していて声が上手く出てこない。
手を動かそうとしたけど、身体が痺れたように動かない。
「苦しい…やめ…」
呻くと、圧迫した手が離れた。
だけどすぐに顎を持たれて右を向かされた。
そこには恍惚とした表情を浮かべる、俺の恋人が居た。
長いこと片思いして、やっとこの前両思いになって…
泣いて喜んでくれた俺の恋人。
「翔…?」
視界が揺れる。
この揺れ方…
「あぁ…ねえ、潤…もっと…」
知ってる…この揺れ方…
スプリングの軋む音。
どこからか漂ってくるあの独特の臭い。
荒い息の音。
「しょ…う…」
一瞬、翔の目が俺を捉えた。
ほんの刹那絡みあった視線は、すぐに漂っていく。
「もっとぉ…お願い…」
その表情は、媚さえ浮かべていて。
俺のこと見ながら、俺じゃないヤツを誘惑してる。
こんな翔、見たことがない。
いつか俺の腕の中で…
こんな翔が見てみたい。
そう、夢想していた表情だった。
予想、していたことだった。
潤…おまえなんだな…