第10章 秋風
「そこの立ち位置違うっ!」
2年の稲葉が舞台に叫ぶ。
「声も小さいし、はっきり発声!」
舞台の上のみんなは
ヒソヒソ話す。
「稲葉先輩コワイ」
「次期部長だって。」
「ユウスケ先輩がいいよぉー」
舞台裏にいた僕は、
思わず袖に隠れた。
始業式、部室で守山先生と話した。
「もう、ユウスケも引退だろ。しばらく顧問も、仮顧問で、他の先生に頼んでおいたよ。
だけど、あくまでも仮だ。」
「次期部長に、引き継ぎをしながら、
お前は、俺の代わりをしてくれ。」
なるべく口を出さず、
周り全体を見て、見守る。
守山先生の役割だった。
「わかりました。」
あと1か月。
部活も引退だ。
高校生活も、あと半年。
舞台裏から、稲葉のいる方に向かった。
「ピリピリするなよ、稲葉。」
ハッとした稲葉の手には
ボロボロになった台本。
僕の最後の脚本だ。
頼んだよ、稲葉。