第9章 夏の終わり
「あ!ユウスケ君、早く早く、電車来ちゃうっ!」
改札口の近くから、
ナナミちゃんが手を振っていた。
僕らの街は、急行は止まる。
しかし、1時間に1本だから、
それを逃すと、おっそい鈍行に
乗るしかない。
僕は、思わず走った。
「間に合って良かったぁ~。」
ナナミちゃんは、手をパタパタして
仰いでいる。
対面式のボックスシートに
向かい合わせに座った。
急行とは言え、映画館がある
隣街まで30分。
山越え、川越え、意外と遠い。
僕は、窓の外を見た。
「ね、ユウスケ君。飴食べる?」
今日のナナミちゃん。
昨日よりかわいい。
昨日は、部屋の中とは言え
少し暗かったし
あまり顔を見れなかった。
飴をもらい、横目で
ナナミちゃんを見た。
長い髪は、ふんわりと
軽くパーマをかけている。
目元も薄く化粧をしていて
唇もツヤのあるリップを塗っている。
「ナナミちゃんてさ。」
「ん?」
僕を見る目が
丸くクリクリしていて
かわいらしい。
「女の子、って、感じだよね。」
ナナミちゃんは、目を丸くした。
「あぁ。」
ナナミちゃんは、ニッコリと笑った。
「ユウスケ君の周りには、たくさん女の子いるんだよ?ユウスケ君が見ないだけでさ。」
そうか。
そうだよな。
僕の視界に入ってくる女子は
カナだけだった。
そして、飛び込んできたのは
ナナミちゃんだ。
「そうだよね。今日は誘ってくれてありがとう。」
何だか、面倒な気持ちが
少し晴れた。
窓の外を眺めた。
少し開いた窓から、
風が入ってきた。
僕の心にも、風が吹いた気がする。