第15章 僕たちの行方
僕達は今、田んぼのど真ん中にいる。
50メートル離れた先に、稲葉達がいる。
「ユウスケ先輩、なんで、こんな事するんですか?」
ミカが横で不思議そうにしている。
ミカには、僕のアシスタントも頼んだ。
役は獲れなかったが、満足しているようだ。
「ミカは、隣街のホール、入った事ある?」
「…ずいぶん小さな頃に。でも、よく覚えていません。」
「この辺りじゃあ、かなり広いんだよ。広さは学校の体育館の比じゃないし、舞台設備も、充実している。だから、声が広がってしまう田んぼで、発声練習するんだよ。」
「では、私達は、離れた場所でも、セリフがちゃんと聞こえるか、チェックすればいいんですね。」
「普段の芝居のセリフより、朗読劇は息が長いから、肺活量と滑舌の良さが必要だよ。それに、抑揚も必要になる。」
「…」
ミカが少し下を向いた。
「ミカが下手だ、とは言ってないよ。演劇はさ。演じる側だけじゃ成り立たないし、それを支える側がいなければ、演じる側は光らない。」
「…ハイ」
「…僕も演じる側じゃないんだよ。今回が初めてだよ。だから、僕も、一緒に練習する。…それに。」
まだ下を向くミカの顔を覗き込み、
「もともと、ミカをアシスタントにするつもりだったし、適材適所だと思うけどね。」
ミカが僕を見て笑った。
「わかりました。がんばりますっ。」
「僕も発声には自信ないけどね。」
「ユウスケ先輩、いつも、ボソッとしか話さないですもんねっ」
ミカがまた笑った。