第4章 それぞれの想い
ー翔sideー
影山「お疲れ様です翔様」
「ありがと影山」
校門の前で影山が俺に頭を下げる。
手を差し伸ばした影山に俺は鞄を渡した。
雅紀「影山さんお疲れ様です」
「相葉様お疲れ様です」
雅紀「じゃあね翔ちゃん。また明日」
「え?雅紀乗ってかないの?」
雅紀「今日は大丈夫。本屋に参考書買いに行くから。また明日ね」
歩きながら雅紀が笑顔で手を振る。
「うん。また明日」
影山が丁寧に雅紀に頭を下げた後、俺達は停めている車に戻った。
路肩に停まってる黒塗りのベンツはよく目立つ。
お抱え運転手を連れての登下校なんて…あからさまに俺は金持ちだとアピールしてるみたいなもんだ。
ただでさえ…父さんが警視総監てだけでやっかむ奴等が居るのに。
「おーおー。今日も優雅な登下校ですねー翔坊っちゃん」
………来た。
顔を見なくても分かる。
こんな事言うのはあいつらしか居ない。
「影山行こう」
「おーい無視かよぼんぼん」
俺は振り返る事も無く直ぐに車を乗り込んだ。
「はぁ…疲れる…」
影山「翔様」
「ん?」
影山「旦那様に伝えて…やはり登下校は無しにしてもらいましょうか」
運転する影山の瞳が心配そうに俺を捉える。
「平気。無視してれば良いから。」
影山「かしこまりました。でもあまりご無理はなさらぬ様」
「ありがと」
窓から外の景色をぼんやりと眺めてるとつい溜め息が出てしまう。
「はぁ…」
その溜め息を影山は見逃さない。
影山「翔様」
「んー?」
影山「お疲れでございますか?」
「大丈夫だよ。影山は心配し過ぎ」
影山「それならば…よいのですが」
「うん」
影山「もしかしたら…お話しして下さった方の事ですか?」
「え?ば、馬鹿…違うよ」
影山にだけ話してしまったあのキスの事。
その事を影山は言ってるのだろう。
「あれは…一時の気の迷い。もう逢う事も無いから」
影山「そうですか」
そう言いながらも影山は笑ってる。
「もう笑うな!」
座席を叩きながら俺は笑ってしまった。
でも…この時は思わなかった。
あの彼と再会する日がすぐそこに迫っているなんて…。