第20章 2人の道
長瀬「櫻井さんですか?」
「うん。家出て来たって。おいら…今から行く。急がないといつ翔くんとこが探しに来るか…」
智父「なら早く行ってやれ」
「うん」
智父「息子を宜しくと…伝えてくれ」
「………父ちゃん…」
すると父ちゃんがおいらの前に立ち、いきなり抱き締められる。
智父「幸せになれ」
「………うん」
抱き合ったのは多分数秒だった。
でも…長い時間に感じた。
父ちゃん…。
今まで育ててくれてありがとう。
涙が出そうになるのをおいらは必死で堪えた。
智父「よし。行って来い」
「はい」
長瀬「ぼん…」
「皆に挨拶してから出て行きたかったけど…。謝っといて?特に姉ちゃんに。きっと怒るだろうから」
長瀬「はい」
そしておいらは父ちゃんの部屋を出て、そのまま大野組を出た。
携帯の時計を見ると…もう既に日付が変わっている。
「今日って…そういや…」
気付かなかった偶然に気付き、微笑んでしまう。
「翔くん覚えてるかな…逢ったら聞いてみよ」
そしておいらは大学まで走った。
初めて出逢った場所。
そして初めてキスをした場所…。
そこで翔くんは待ってる。
おいらは翔くんの元へ…走った。