第20章 2人の道
ー智sideー
松兄の葬式が行われたのはそれから3日後だった。
大野組の若頭でもあり次期組長。次期昇龍会会長である松兄の葬式には…予想より大勢の人が出席してくれた。
姉ちゃんは…若頭の妻として…気丈に振る舞っていた。
あの日病院で…松兄の遺体にすがり付いて泣き喚いていた姉ちゃん。
式に出る事は難しいだろうと…父ちゃんと話していたのに…。
1人で喪服の用意から来賓への挨拶も…完璧にこなした。
………若頭の妻としてしっかり腹くくってたんだな…姉ちゃん…。
長瀬「ぼん」
「ん?」
長瀬「出棺の準備をそろそろ」
「分かった」
吸っていた煙草を消して、控え室を出た。
会場に入ると…棺の回りには父ちゃんと姉ちゃん。
他の若衆や出席者は外へと出ていた。
『これでもう…蓋を打ち付けても構いませんか?』
係の人がおいら達の顔を交互に見る。
それはもう…松兄に触れるのは…最後だという事。
智姉「大丈夫です」
そう言って下がろうとする姉ちゃんの腕を掴む。
智姉「智…?」
「………姉ちゃん。時間やるから。松兄と話しろよ」
智姉「いいのよもう」
「………いいから。おいら達出てるから終わったら呼んで」
おいらは周りを促しながら会場を出ようとする。
智姉「待って智」
「ん?」
智姉「………一緒に…居て…」
「………」
智姉「お願い」
長瀬「ぼん。姉さんと一緒に」
智父「頼むぞ」
そう言って…全員が会場を出て行く。
会場には…おいらと姉ちゃん、そして…松兄が残った。