第15章 愛する人の為に
「うちに置きっぱなしになってるのある?」
翔「うん…何も持たずに行ったから平気…」
「そっか」
玄関に来てからもう30分位経とうとしてる。
帰んないといけないのに…翔くんが繋いだ手をなかなか離してくれない。
いや…おいらもなかなか帰られないでいる。
離れるのは…やっぱり寂しい…。
翔「本当に…一緒に行っちゃ駄目…?」
唇を尖らせながら翔くんはまだごねていた。
「認めて貰うまでだよ」
翔「………いつになるか…」
「きっと大丈夫。頑張ろう。それまでにおいらも…頑張るから。組の事。色々」
そう…。
松本組との事。
潤の怪我…そろそろ治る頃だよな。
あいつの事だ…リベンジに来るに違いない。
翔「………分かった」
「うん。じゃあそろそろ帰らないと…」
翔「お父さん…組長さんに宜しく伝えて?『短い間でしたけどお世話になりました』って」
「気にしなくていいのに」
翔「こういう礼儀はちゃんとしとかないと…」
「ふふっ真面目だなぁ。分かったよ。伝えておく」
翔「お願いします」
「はい」
そして翔くんがゆっくりと…繋いでいた手を離した。
翔「………愛してるよ」
「おいらも…愛してるよ」
回りに誰も居ないのを確認して…そっと翔くんにキスをする。
頬を赤く染めながら翔くんが笑った。
「じゃあね」
翔「うん」
そしておいらは翔くんを残し…屋敷を出た。
何度も何度も振り返りながら…翔くんに手を振る。
翔くんも…おいらが門をくぐるまでずっと…笑顔で手を振っていた。