第8章 離さない、寂しいよ。
そこには運が悪くハヤトが立っていた。
今すぐ逃げ出したかったが、腰の痛みと足がすくみ動こうにも動けなかった。
牡丹はどうしたらいいとか、わからずに目からは涙をこぼす。
「い、今は何もしないからさ…泣かないでよ!」
「申し訳ございません…。」
涙を拭おうと伸ばすハヤトの手を牡丹は、パシンと払う。
こんな事したら、またお仕置きされる。
頭によぎるが、それよりも今、ハヤトに触られる事が何よりも嫌で嫌でしょうがない。
牡丹は自分で涙を拭いながら、フラフラの足取りで支度に向かう。
「…ごめん。」
今日は天気が良く、屋敷の窓から朝日がキラキラと差し込む。窓の外には小鳥が2匹。
ハヤトの言葉は、小鳥のさえずりにかき消され、牡丹には届かなかった。