第9章 赤紫
おそ松の包帯を見た瞬間、俺の頭に金槌を打たれたようなショックが起きた。怒りや恐怖じゃない。”喜び“だったのだ。
ただ呆然とおそ松の左手を見ていた。
「………驚いた?」
そりゃ驚くに決まっている。
嬉しくて。
みんながこんなになるまで、俺を必要としてくれたのが、嬉しくて。
俺はおそ松の左手に触れ、痛くて顔を歪めるおそ松のことなんか気にせずにただひたすら血の滲んだ包帯を愛撫していたのだ。
「………いたいんだけど」
そこでやっと我に還る。
「悪い………」
パッと手を離した。
おそ松はパーカーの袖を再び戻し、立ち上がる。
その時、一松が部屋に入ってきた。